金たぴのぶろぐ

理系大学院生のつぶやき

発言の背景

私はある商業施設でアルバイトをしている。そのアルバイトの業務として、2〜3時間に一度レジ金チェックというものがある。レジに登録された金額と、実際にレジに入っている金額が合っているかどうか確認するという作業だ。

 

紙幣と硬貨の数を数えるだけの作業であるため、別段特別な能力は必要としない。しかし電卓で計算するか、暗算で計算するかということになれば話は変わる。難しい計算ではないとはいえ、計算間違いをしてはいけない場面で暗算するというのは、ある程度の計算力を必要とするのだ。

 

ある時私がアルバイトをしていると、パートのおばちゃんが愚痴をこぼしてきた。曰く、レジ金チェックの際、ある学生から

「僕は計算力が低いので、暗算ではできないんですよ」

と言われたと。それが、

「イヤミにしか聞こえんかってん」

と。

 

その学生は、私と同じ大学に通っていた。私の通う大学は、日本国内では名の知れた、所謂名門大学である。故に先ほど述べた学生は、世間一般から見ると「頭が良いはず」の学生であるということになる。

 

そういった背景を踏まえると、先ほどの発言、「僕は計算力が低い」はどのように捉えられるか。恐らく多くの人が「イヤミ」だと思うだろう。頭が良いのに計算力が低いとは、如何なることか、と。

確かに軽い気持ちでしていい発言ではない。だが私は、この発言を一部擁護したい。

 

名門大学に通う人間は、世間一般と比べると賢い。だが皆同じように賢いかと言われると、否である。「賢い」にはランクがある。賢い集団の中に身を置いている者として、それを顕著に感じる。その集団の中でもなお賢い人というのは、講義内容等の理解が本当に早く、頭がキレる。毎度どうしてこんな解法を思いつくのか、という方法で問題を解いていくその姿を見て、「この人には敵わない」と思い知らされる。そういう状況になった時、私は「自分ってあんまり賢くない」と感じる。井の中の蛙が大海を目の当たりにし、あまりの広さに絶望している状態だ。

 

話を本筋に戻すと、「僕は計算力が低い」という発言は、私と同じように大海を目の当たりにしてきたために出てきたものであると思う。計算力が低いというのはイヤミなどではなく紛れもなく本心なのだ。繰り返すが、イヤミと捉えられる可能性が十分にあるため迂闊にしていい発言ではない。

 

だが、賢いはずの人間が「自分は頭が悪い」と発言していた時、こういった背景もあることをお伝えしたい。